「MORIWAKI LEGEND MONSTER」マフラーへの道のり
 

Text:向笠 曉彦   


 2013年7月7日兵庫県三木市に於いてKAWASAKI Z1 FAN CLUB主催で行われたZ1発売40周年記念パーティー「KAWASAKI THE LEGENDS & FUTURE」は約150名のZ1/Z2開発、販売、レースに携わった関係者、そしてモリワキエンジニアリング社長ご夫妻、そして多数のKAWASAKI Zファンを集め盛況のうちに終了。その中には、Zの世界で高名なドイツのZフリークで著書も持つMicky Hesse氏、ニュージーランドの元GP&モリワキライダー Graem Crosby氏(以下クロスビー氏)のお二人が。これは、Z1に関わった伝説的な人物をヨーロッパおよび他の国から2名招待しようという主催 KAWASAKI Z1 FAN CLUB(以下Z1FC)有志による発案で、紆余曲折を経て粘り強い交渉の末ようやく実現したものです。当日会場では、サインや写真撮影、それにトークショウと気さくにファンサービスに応じるお二人の姿がありました。

ところでZ1FCクラブ員は三度の飯よりカワサキとZが好きな者ばかりですが、そんな彼らから圧倒的な支持を得ているのがモリワキエンジニアリング(以下モリワキ)。クラブ員の中から数名のモリワキファンが中心となり、パーティー2日前に合わせて一つのサプライズが計画されました。それは久しぶりとなるクロスビー氏と森脇社長のサプライズ再会!!、ご家族の南海子様、緑様、スタッフ原様のご協力をいただき、7月5日午後、鈴鹿モリワキショールームに往年のモリワキモンスターレプリカに跨ったクロスビー氏が颯爽と登場、森脇社長は大いに驚き、ご家族やスタッフの皆様と共に喜び祝う感動に包まれた再会となりました。Z1FC有志による、この手作りのイベントは大成功、クロスビー氏、モリワキの皆様、そしてZ1FCメンバーは共に喜び、大きな感動を得ました。その夜、関係者一同で開かれた食事会ではテーブルを囲み当時を懐かしむ思い出話や、Z1・Z2そしてモリワキに対する熱い気持ち等、話が尽きることはありませんでした。
そこから飛び出したのが、「MORIWAKI LEGEND MONSTER」マフラー構想。70年代の終わり世界のサーキットで活躍したモリワキモンスター達に装着された、俗に言う黒鉄モナカ管と称されるマフラーを再び造ろうというのです。話はとんとん拍子に進み、Z1FC有志が企画立案しモリワキに製作を依頼、共に40周年となる「KAWASAKI Z1販売開始」と「モリワキ社創設」を記念して、40本を限定生産しクラブ員に向けて販売するというプランがまとまりました。また、マフラーの仕様検討と製作に当たってはモリワキの多大な理解と協力、そして北海道から沖縄まで多数のクラブ員から資料提供や車両提供等を得て実現に向けて動き出しました。その一つがクラブ員提供の70年代後期の黒鉄モナカレース管、有志が望んだのはこの黒鉄モナカ管を単にフルコピーするのではなく、伝説のマフラーを更に進化させることでした。

進化とは換言すれば、伝説のスタイル・性能と実用性の両立。その仕様は、まず全体的なスタイルにおいて往年のモリワキ黒鉄モナカを再現すること。例えば集合ピラミッド部分を当時のレース管同様に少し下に寝かせ、集合部からサイレンサーにかけての流れるようなライン、そしてマフラーの見た目に大きな影響を与えるエキパイやモナカサイレンサー部分の造形にこだわります。次に細部においてもフランジの溶接、エキパイ差込口の段差、集合ピラミッド部分の形状や寸法、エキパイとのスプリング掛け方法、モナカサイレンサー内部のパンチングやリブ等当時のスタイルを追求します。さらに製法も溶接をあえて当時と同じガス溶接とすることで荒々しい溶接痕を再現しました。一方、実用面ではZ1、Z2専用設計とし車体へ無加工で装着できること。例えばタンデムステップ用のステーは切断不要で、加えてサイレンサーが外へ張り出さない絶妙の取り回しにすること、取付ステーを見た目にも機能的にも最適なセンタースタンド受け部への取付とすることなどを盛り込みました。以上、Z1FC有志による実にマニアらしい無茶なリクエストの数々ですが、実現のため鈴鹿のモリワキ本社へ度々足を運び、森脇社長以下モリワキ側担当者と幾度となく打ち合わせを行いました。モリワキの皆様は沢山の試作品の作製そして修正と、嫌な顔一つ見せず要望をじっくりと聞き入れて問題解決にあたってくださいました。その技術力と親身な対応にはただただ感謝あるのみです。

今年3月ついに量産試作品が完成し車両装着テストを開始。結果は関わった全員を120%満足させました。その後クラブ員向け発表と購入受付が始まり、様々な感嘆の声があがる中あっという間に完売・締め切りとなりました。こうして夢は結実し5月に首を長くして待つクラブ員の下へ。製品を手に取るとエキパイやサイレンサーの曲げ、溶接等職人技に感心します。製品には40本限定のシリアル番号が打たれ、モリワキの歴史をつづるDVDも添えられて購入者の心をくすぐるうれしい特典付きです。Zに装着すると美しいRを描くエキパイや絶妙な曲がりで車体に取り付く集合部からモナカ部分のラインにほれぼれ見とれ、野性味あふれるモリワキサウンドに聞き入りました。それはサーキットを想起させる咆哮の中に鉄パイプ独特のまろやかな音色を奏でます。しばらくその音を楽しみ市販のサイレンサーを組込むと一転ジェントルなサウンドへ。あらためてこのマフラーを眺めるとモリワキモンスターがサーキットを所狭しと暴れまわった当時の姿がまざまざと浮かびます。まさにモリワキが生みだしたレジェンド(伝説)、現代によみがえった逸品「MORIWAKI LEGEND MONSTER」は、モリワキとZを愛する人たちの物語を紡ぎ、あらたな伝説を生み出していくことでしょう。




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 モリワキ本社へ 森脇社長さんと原さん マフラー製作について打ち合わせ中 
     
 
 まずはクラブ員から提出された鉄モナカを前
に記念撮影
サイレンサーの構造をチェック  スプリングの形状もチェックしていましたよ 
     
 
この#317徳野車のイメージでお願いしました